粉瘤(ふんりゅう)、アテローム、類表皮嚢腫(るいひょうひのうしゅ)

保険診療

粉瘤とは?

粉瘤(ふんりゅう)は世間一般的には「しぼうのかたまり」と呼ばれることもあるようですが、本当は脂肪の塊ではありません。これは皮膚の中~下に袋状の構造物ができ、その中に本来皮膚から剥げ落ちるはずの垢(角質)や皮膚の脂(皮脂)が溜まってできた腫瘍の総称です。医学的には類表皮嚢腫、外毛根鞘性嚢腫、脂腺嚢腫の三つの嚢腫を包括した臨床的診断名で、アテローム・アテローマと呼ばれることもあります。
このように粉瘤は脂肪細胞そのものが増殖してできる脂肪腫という良性腫瘍とは全く別のものです。


右肩の粉瘤
粉瘤の症状

皮膚の中~下に出来た小さな丸い瘤が徐々に大きくなり、盛り上がってきます。最初はニキビのように思われることが多いようです。盛り上がった皮膚の中央に黒く小さな穴が空いていることがあり、その付近を強く押すと穴からドロっした内容物が出てくることがあります。これは頭から足の裏までどこにでも出来ることがあります。多くの場合は一個~数個程度しか出来ませんが、多発する場合もたまにあります。時間の経過と共に徐々に大きくなることが多く、大きいものは5㎝以上になることもしばしばあります。
自己流に粉瘤を潰そうとして強く押さえたりすると化膿することがあります。化膿すると赤く腫れ、痛みや膿が出てきたりして、日常生活に支障を来すこともあります。
また、非常に希ですが、長期間経過した粉瘤の中では悪性化することがあります。

粉瘤の治療

粉瘤を自分で潰して中身を出すと一時的にしこりが小さくなりますが、袋自体が残っているとまた内容物が溜まり、しばらく経つと再発してくる可能性が高いです。
飲み薬や塗り薬だけの治療は一時的に症状を抑えることは出来ても、このように中の袋が無くならない限り粉瘤は根治出来ないため、最終的には手術が必要です。手術をすると何らかの傷は残ります。「手術を受けると傷が残るから、手術をせずに様子を見た方がいい。」とアドバイスを受けられた、というような話をお聞きする事が時々あります。しかし粉瘤は少しずつ大きくなるので、小さいうちに手術を受けた方が術後に残る傷が短くなるので、大きくならないうちに治療を受けられることをお勧めしています。
粉瘤の治療は化膿している場合とそうでない場合で治療内容が変わってきます。

 

1):化膿している場合

化膿している場合、化膿している病変ごと摘出すると傷が長くなるので、局所麻酔下に皮膚を小さく切開し、膿などの内容物を掻き出します。局所麻酔の際には出来るだけ注射の痛みが少なくなるような麻酔法を心がけています。その後処置を続け、充分に炎症を抑えてから残った腫瘍を摘出します。

2):化膿していない場合

化膿していない場合、そのまま手術にて摘出することが可能です。手術には以下の2つの方法があります。どちらの方法を選択するかについては診察の結果次第です。

  • 切除手術
    局所麻酔を行い、出来るだけ小さな皮膚切開から腫瘍を摘出します。腫瘍を摘出したあとは傷が出来るだけきれいになるように細い糸で丁寧に縫合します。傷跡は皮膚のしわに沿う方向になるように縫合していますので、最初は赤みを帯びていますが、白くなると目立ちにくくなります。この方法は後述する「くり抜き法」に比べると傷の長さが長くなるものの、直視下に腫瘍を摘出するため過去に炎症を起こして腫瘍の周りが瘢痕化している症例でも確実な摘出が見込めることと、治療が一段落するまでの期間が「くり抜き法」に比べて短いです。
  • くり抜き法
    局所麻酔を行い、表面の皮膚開口部およびその周りの皮膚をディスポーザブルパンチという直径4mmほどの円筒状のメスや手術用のメスで袋状構造物の一部とともにくり抜きます。くり抜いた後、内容物をもみだしながら袋そのものもできるだけ取り除きます。傷の部分は縫わずに軟膏処置で治療します。その傷がふさがるには約2~3週間かかります。最終的には傷跡はにきび痕の様なへこみになります。本法は切除手術に比べると施術時間が短いという長所がありますが、傷が乾くまでの日数は長くなります。また、過去に炎症を起こした事のあるような症例には摘出が難しい場合もあるので積極的には使っていません。
    当院では腫瘍が小さい場合に使うことがありますが、原則的には本法を行っておりません。