イオン導入とは?

イオン導入とは?

イオン導入(イオントフォレーシス)とは微弱な直流電流の力でイオン化したビタミンCを始めとした美容液の有効成分を皮膚の表面から奥深くに浸透させる方法のことです。

皮膚には紫外線、乾燥、色々な有害物質などの刺激から体を守る様々な働きがあります。皮膚の表面の最外層にある角層では古くなった角化細胞が膜状になり、それらが落ち葉を敷き詰めたように10層ほどに重なり、更にそれらの細胞の間をセラミドに代表される各種細胞間脂質が隙間を埋めることで、色々な物質が体の中に入り込みにくい構造をとっています。この構造は特に水溶性のものを通しにくくなっているので、普通のビタミンCなどの水溶性のものを単純に水に溶かして肌に塗っても、皮膚のごく表面に少ししか浸透しません。
ここで皮膚への浸透性を高める方法として、
1)浸透させたい物質の濃度を高くする
2)角層のバリア機能を何らかの方法で低下させる
3)外から何らかのエネルギーを加えることで浸透性を高める、などがあります。
このうち皮膚への侵襲が少なく、透過量が制御しやすい薬物送達技術として3)の方法の一つである「イオン導入」が現在広く活用されています。
イオン導入の原理は、通電することで水溶液中の陽(+)イオンおよび陰(ー)イオンがそれぞれ(ー)極および(+)極に向かって移動することを利用したものです。具体的には電極の先端に美容液で十分に湿らせたガーゼなどを付け、その先端を目的とする部位にて体に影響を及ぼさない程度の微弱な電流を流しながら当てることで施術を行います。これにより必要な成分をより多量に、より深く送り込むことが可能になります。皮膚の部位、使う美容液や機器によって測定結果に色々違いがありますが、導入することで単純に塗る場合に比べて数十〜数百倍ほども皮内に浸透させることが可能になるようです。
水に溶ける物質であればイオン導入は可能です。アンチエイジング治療にはビタミンC, E, Aやトラネキサム酸などの導入が使われることが多いですが、帯状疱疹後の神経痛の治療においては麻酔薬やステロイド剤などの患部への導入が行われるなど、美容以外の一般皮膚科領域においてもイオン導入は行われているようです。
ただし、水に溶けるものであれば何でも使えるわけではなく、ものによっては特殊なものを使用する必要があります。例えば、純粋なビタミンCは水に溶かすと非常に不安定で、すぐに酸化されるため、その効果は長く保たれません。また、皮膚には元々水溶性のものはほとんど浸透しないので、そのまま導入しようとしてもほとんど効果が期待できません。そこでビタミンCの構造を一部変化させ、美白・抗酸化作用などの機能を残しつつ、皮膚に浸透しやすくなるように油分にも溶ける性質を持ち、安定性の高いビタミンC誘導体と呼ばれるものが色々な会社から開発されてあり、実際の施術にはこのような特殊な性質をもつ成分が含まれるものを使用しています。
イオン導入は手術やシミ取りレーザーなどとは違い、一度の施術だけではあまり効果が実感しにくいです。症状などにより1日〜1ヶ月に1回の割合で繰り返すうちに、少しずつ効果が実感できるようになる治療です。

イオン導入の実際
  • お化粧を落とした状態で、医師がお肌の診察、診断を行います。
  • 治療開始前に写真撮影を行います。
  • ベッドに横になり、ニュートラル電極(アース)を握っていただきます。経験豊富なスタッフが目的とする部位に導入端子を軽く当てながら導入を行います。(図1)途中時々ピリピリすることがあるかもしれませんが、強い痛みなどはありません。
  • 治療にかかる時間は、顔全体で15分程度です。治療直後から肌がしっとり・ふっくらしていることが実感できます。施術後の軟膏、テープなどは不要です。そのまま日焼け止めなどを塗ってお帰りになれます。

イオン導入中:導入端子の先端に美容液で湿らせたガーゼを付け、微弱な電流を流した状態で顔全体上を軽く滑らせていきながら、美容成分を皮膚へ浸透させていきます。効果は導入直後から実感でき、シミ取りレーザー照射の際に生じる様な赤み、強い痛み、カサブタなどの心配はありません。


図1