炎症後色素沈着

自由診療

炎症後色素沈着とは?

炎症後色素沈着とはケガやヤケド、レーザー治療、強い日焼け、摩擦、ひどい湿疹、皮膚感染症など皮膚に炎症がおきた後にその部位のメラニン色素が増加して茶色くシミの様に見える状態の事です(図1,2)。炎症後色素沈着の機序は完全には明らかになっていませんが、皮膚に何らかの炎症が起こると様々なサイトカインやアラキドン酸代謝産物などの化学物質が産生され、それらによってメラノサイトと呼ばれるメラニンを作る細胞が刺激されてメラニンの合成が亢進し、色素沈着を生じると考えられています。これらの化学物質はメラノサイトの周りに存在する細胞、血管、神経などから分泌されますが、外傷、熱傷、日焼けなどのそれぞれの炎症で生じている変化はそれぞれ異なり、関与する細胞や化学物質もそれぞれ異なっています。

図1)虫刺されの跡に生じた炎症後色素沈着
図1)虫刺されの跡に生じた炎症後色素沈着
図2)やけどの跡に生じた炎症後色素沈着
図2)やけどの跡に生じた炎症後色素沈着
炎症後色素沈着の治療は?

原疾患の治療
炎症後色素沈着の原因が湿疹やカブレなどの場合、原疾患のコントロールが重要です。特に何かに対する接触皮膚炎(カブレ)が疑われるときは治療のための塗り薬を使うだけでなく、原因と思われるものを使わないようにすることも必要です。
紫外線対策
紫外線を浴びることでメラノサイトが活性化するため、紫外線対策は炎症後色素沈着に限らず「シミ」全般のケアにおいて非常に重要です。日焼け止めを肌にあったものを規定の量きちんと塗る必要があります(図3)。また日焼け止めは一度塗っても汗を拭いたりすれば取れてしまうので、2~3時間おきに塗り直すことが望ましいです。最近はパウダータイプ、スプレータイプのものもあるので塗り直しも比較的簡単に出来るようになっています。

図3)日焼け止め
図3)日焼け止め

摩擦による炎症の予防
洗顔時に強くこすり過ぎないように注意することは大切です。メイク落としの際には、こすらないようなクレンジングケアが行う事が大事で、良く泡立ててソフトな洗顔に心がけ、スクラブは過度のマッサージは控えてください。
入浴時に体を洗うときもナイロンタオルでゴシゴシとこすりすぎないように気を付けてください。
美白剤(外用剤)
ハイドロキノンは代表的な美白剤の一つでメラニンの生成の過程に働くチロシナーゼという酵素の活性を抑えることで美白作用を示します。ハイドロキノンは広く普及していますが、時々炎症反応などの副作用を生じる事があるので医師の指導の元で使用する事が望ましいです。
その他ではビタミンC誘導体はメラニン合成経路においてその抗酸化作用により、メラニン生成を抑制することが美白作用を示します。またビタミンEもチロシナーゼ活性抑制などの作用によって美白作用を示します。

図4)ハイドロキノン配合美白剤
図4)ハイドロキノン配合美白剤

内服薬
ビタミンC(図5) やビタミンE(図6)の内服は肌に対する効果としては酸化型メラニンに対する還元作用、チロシナーゼ活性抑制、DOPAキノンをDOPAに還元することなどがあり、メラニンの産生を抑えることによる美白作用があります。
通常、内服1~3ヶ月頃より改善が認められるようになりますが、紫外線の強い時期は長期間服用を行うことがあります。一時的な炎症後の色素沈着の場合、症状が軽快すれば内服は終了となります。

図5)ビタミンC錠剤
図5)ビタミンC錠剤
図6)ビタミンE錠剤
図6)ビタミンE錠剤

レーザー治療
炎症後色素沈着の治療にもレーザートーニング(図7)は有効です。肝斑に照射する場合より少し強めの設定で炎症後色素沈着の部位に2~4週おきに照射していきます。照射後は特にテープや外用薬を使う必要はありません。肝斑の場合に比べると炎症後色素沈着の方が治療に対して反応が良いケースが多いようです。

図7)レーザートーニングに使用するQスイッチYAGレーザー
図7)レーザートーニングに使用するQスイッチYAGレーザー