ビタミンE

自由診療

ビタミンE(α-トコフェロール)

植物油やナッツ類に多く含まれるビタミンEは1936年にアメリカのエバンスらによって抗不妊因子として発見された脂溶性ビタミンです(図1, 2)。
その重要な生理作用は抗酸化作用です。体の中の一つ一つの細胞を形作る細胞膜や細胞の中のミトコンドリア、ライソゾームなどの微小器官を構成する生体膜は多価不飽和脂肪酸を豊富に含んでいますが、酸化ストレスに弱く、過酸化脂質へ変化しやすいです。そうなると細胞膜や生体膜を傷め、異常細胞を形成したり、細胞の死が早まったりします。食品などに「酸化防止剤」として添加されていることもあるビタミンEはこれらの多価不飽和脂肪酸が過酸化脂質へと酸化されることを抑える働きがあります。生体膜安定化作用および過酸化物生成の抑制作用は循環器、神経、内分泌、血液、生殖などの機能の維持に重要な役割を果たしています。
皮膚においてはビタミンEの抗酸化作用がメラニン生成過程を抑制したり、メラニンを還元したりすることで美白作用を発揮すると考えられています。また、この抗酸化作用はビタミンCと同様に紫外線照射によって皮内で発生する活性酸素を除去するので、真皮内のコラーゲン線維の破壊などから生じるシワなどの肌の老化を防ぐ働きが考えられています。
本剤は肝斑、炎症後色素沈着に対して処方します。肝斑に対してはビタミンE、ビタミンCをそれぞれ単独で服用するよりも、ビタミンEとCを同時に服用した方がその効果が高くなるという報告があるので、2剤を同時に処方することが多いです。通常、内服1~3ヶ月頃より改善が認められるようになりますが、肝斑の場合は内服を中止すると1ヶ月半~3ヶ月ぐらいで再び色調が濃くなることが多いので、特に紫外線の強い時期は長期間服用を行うことがあります。一時的な炎症後の色素沈着の場合、症状が軽快すれば内服は終了となります。しかし内服するだけでなく、実際には日焼け止めなどの紫外線対策や美白剤、生活指導なども十分行い、総合的に治療することが大事です。


図1)ビタミンEの錠剤

図2)ビタミンEの構造式