色素性母斑(しきそせいぼはん)

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体のどこにでも見られるいわゆる「ほくろ」の大半は母斑細胞性母斑(ぼはんさいぼうせいぼはん)=色素細胞母斑(しきそさいぼうぼはん)=色素性母斑(しきそせいぼはん)と呼ばれ、母親のおなかの中にいるとき(胎生期)からある「ほくろ」の細胞(母斑細胞)が生まれた後も少しずつ増殖し、目に見えるようになったものです。同じ母斑細胞の増殖によるものでも、数mm〜1cm位のまでのものは「ほくろ」と呼ばれ、それよりも大きなものは「黒あざ」と呼ばれたりすることもあります。母斑細胞は皮膚の比較的浅いところにのみ存在するものから皮膚の深いところまで広がるものまで様々で、それにより成長のしやすさが違うようです。特に顔においては単に大きくなるだけでなく盛り上がってくるタイプの「ほくろ」が多いので、その除去を希望される方が多いです。


上くちびるにあるドーム状に盛り上がった「ほくろ」と平らな「ほくろ

前腕にある生まれつきの「ほくろ」(先天性母斑)
ほくろの治療は?

まずはその病変が本当に普通の「ほくろ」であるかどうかを診断することが重要です。患者さん自身が「ほくろ」だと思われていても、実際に診察するとイボや血管腫であったり、ごく稀には早期の皮膚癌であったりすることがあります。まずは詳細に肉眼で診察を行いますが、この場合にもダーモスコープの併用が診断に非常に有用となることが多いです。多くの場合はこれらの方法で診断がつきますが、診断が紛らわしい場合や悪性の可能性のある場合は切り取って調べる検査が必要になる事もあります。


写真:ダーモスコープ

いわゆる「しみ」と違い、「ほくろ」の細胞は皮膚の表面だけではなく、皮膚の深いところまで存在しています。これらのうち浅いところに存在する細胞はメラニン色素を持つものが多いので「ほくろ」は全体として黒〜褐色に見えます。しかし、そのような場合でも深いところ存在する細胞はメラニン色素を持たないので黒く見えず、周りの組織と目で見ただけでは区別することが難しいことが多いです。

「ほくろ」を治療する際に、いわゆる「しみ」や「刺青」の治療に用いるメラニン色素や黒の色素に反応するレーザー(例:Qスイッチルビーレーザー)を照射するだけの施設があります。この方法では表面に近いメラニン色素を持った細胞には反応するかもしれませんが、深いところのメラニン色素を持たない細胞には反応が期待できないため、照射後一時的には薄くなる場合もありますが、比較的早期に再発する傾向が強いようです。
よって「ほくろ」の治療は皮膚の深いところまで存在している母斑細胞をきちんと取り除く必要があります。

治療は局所麻酔下に行います。「注射」と聞くと身構えられる方も多いかと思いますが、当院では注射の際の痛みを少なくするために出来るだけ細い注射針を使用し、神経、血管の解剖に留意しながら丁寧に麻酔していきますので、最初の「チクッ」とした痛み以外は問題にならない場合が多いです。

「ほくろ」が小さい場合は高周波メスや炭酸ガスレーザーで「ほくろ」の部分をくり抜くことがあります。術後はその部分が少々凹んだ状態になって、最初はジクジクしています。例えて言うと、面積は狭いですが、やや深めの擦り傷みたいな状態です。これを軟膏とテープで治療していきます。「ほくろ」のある場所や大きさにもよりますが、大体1週間以内にキズは乾いてしまいます。その後はその部分に日焼け止めや美白剤をつかいながら、その部分の赤みや色素沈着の治療を行います。最終的にはにきび跡や水疱瘡の跡のような小さな白い跡が残りますが、実際には気にならない程度のものになると思われます。
「ほくろ」がある程度大きな場合や小さくても見た目だけでは診断が紛らわしい場合などはメスで「ほくろ」を切り取る方法を取ることになります。切除後は縫い終わった跡がシワに沿う方向になるように特殊な縫合材料と形成外科的手技を用いて丁寧に縫合していきます。切除した場合は顕微鏡による検査も合わせて行い、診断を確定します。術後の跡を目立ちにくくするためには、手術そのものだけでなく、その後のケアも重要です。必要に応じて、テーピングなど処置を続ける場合が多いです。最終的には白い細い線としてのキズは残りますが、実際には気にならない程度のものになると思われます。
どちらの方法を行うかについては、「ほくろ」のある場所、大きさや患者さんの肌の状態によって違いますので、実際に状態を診察させて頂いた上で決定することになります。どちらの場合でも、術後の跡が最小限で出来るだけ目立たなくなるように注意しながら形成外科的手技を駆使して手術を行っています。